FTXとは？破綻事件の経緯や詳細をわかりやすく解説｜2025年

FTX（エフティーエックス）は、わずか数年で世界第2位の取引高を誇るまでに急成長したものの、その後、突如として経営破綻し、仮想通貨業界最大級のスキャンダルの象徴となった取引所です。

同取引所は特にデリバティブ取引の分野で圧倒的な存在感を示し、多くの個人投資家や機関投資家から高い支持を得ていました。

しかし2022年11月、姉妹会社との不透明な資金のやり取りや顧客資産の不正流用、不適切な会計処理といった内部の問題が明るみに出たことで、わずか数日で経営が破綻。負債総額は500億ドル規模にのぼり、業界全体を震撼させる事件へと発展しました。

本記事では、FTXの破綻に至るまでの経緯を時系列で振り返りながら、背景で何が起きたのか、破綻理由、業界への影響や今後の教訓についてもわかりやすく解説します。

FTXとは？

FTXは、2019年にサム・バンクマン＝フリード氏が設立した海外の暗号資産（仮想通貨）取引所です。わずか数年で世界第2位の取引規模を誇るまでに成長し、多くの投資家から支持を集めていました。

革新的なプロダクト設計と機関投資家向けの高機能なサービスにより、FTXは短期間で業界を代表する取引所へと躍進。日本市場にも進出し、FTX Japanという日本法人を通じて国内ユーザー向けのサービスも展開していました。

しかし、2022年11月11日に破産申請を行い、グループ全体で経営破綻に至りました。申請時点での負債総額は最大500億ドル規模と報じられています。

FTXの基本情報

FTXの特徴や提供サービス、企業規模などを整理すると、同社がいかにして短期間で業界の中心的存在となったのかが見えてきます。グローバル展開にも積極的で、日本市場には「FTX Japan」を通じて進出し、国内ユーザー向けのサービスも提供していました。

FTXの特徴

FTXトレーディングが短期間で有数の取引所大手へと急成長を遂げた背景には、従来の取引プラットフォームと本質的に異なる革新的な特徴を備えていたためです。

多様なデリバティブ商品を提供

FTXは、ビットコイン（BTC）やイーサリアム（ETH）などの現物取引だけでなく、以下のような高度なデリバティブ取引機能を提供していました。

• 先物取引：無期限・期限付きの契約を提供し、最大100倍のレバレッジ取引が可能
• オプション取引：特定の価格で売買する権利を取引する金融商品
• MOVE契約：一定時間内の価格変動幅に賭けるユニークなデリバティブ商品
• レバレッジトークン：証拠金管理不要でレバレッジ取引が可能なトークン化資産

これらの多彩な商品ラインナップに加え、スプレッドの狭さにも定評があり、コストを抑えた取引を重視するトレーダーから高い評価を受けていました。商品ラインナップはプロフェッショナル向けの取引ニーズにも応えられる高度なマーケット構造を実現していました。

独自トークン「FTT」を中核とするエコシステムを構築

FTXの独自トークン「FTT」は以下のような多面的なユーティリティを設けることで、エコシステム全体の活性化を図っていました。

• 手数料の割引
• 保証金としての使用
• FTXトークンのバーンによる供給量の調整と価値の維持
• IEO（Initial Exchange Offering）への参加権利

FTTはFTXエコシステムの中核を担うネイティブトークンとして機能していました。

UI/UXに優れた取引インターフェース

FTXの取引画面は、TradingViewを基盤とした高性能チャート機能を採用し、プロトレーダー向けの高度な分析環境を提供しながらも、直感的で視認性の高いデザインにより初心者にも扱いやすい構成となっていました。

特に以下の点が高く評価されていました。

• ワンクリックでの注文操作
• 高速かつ安定した約定処理性能
• カスタマイズ可能な板情報・チャートパネル
• API対応によるボット運用や自動売買への最適化

使いやすさと機能性を両立したインターフェース設計により、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザー層の支持を集めていました。

幅広い資産クラスと取引ペアの提供

ビットコインやイーサリアムなどの主要通貨やアルトコイン、草コインのほか、以下のような伝統的金融資産の取引サービスも提供していました。

• 株式（例：Tesla、Appleなどの米国株を模した資産）
• 為替（例：USD/JPYなどの主要通貨ペア）
• コモディティ（例：原油や金の価格に連動する資産）

おすすめ仮想通貨を豊富に取り扱うことにより、トレーダーのみならず、株式・FX・商品市場の参加者など、従来の金融分野の投資家層も取り込むことに成功していました。

グローバル展開と規制対応

米国市場向けに提供されていた「FTX.US」をはじめとして、各国・地域の法規制に準拠した形でサービスを展開していました。

日本市場では「FTX Japan」を設立し、金融庁の認可を受けたうえでサービスを提供。厳格な規制環境下でも運営できる体制を整えていました。

• 多言語対応：英語圏・アジア圏を中心としたグローバルなユーザー基盤への対応
• コンプライアンス体制の構築：AML（マネーロンダリング対策）およびKYC（顧客確認）プロセスの整備
• ライセンス取得への取り組み：キプロスやバハマをはじめとする法域での登録と認可の取得

FTXは各国の規制に対応しながらサービスを広げることで、多くのユーザーを獲得し、グローバルな取引所としての存在感を高めていきました。

サム・バンクマン＝フリード氏について

創設者サム・バンクマン＝フリード氏は、技術志向かつ論理的思考に優れた若手起業家として注目を集めた人物です。

1992年にアメリカで生まれ、マサチューセッツ工科大学（MIT）では物理学と数学を専攻。卒業後は、金融トレーディング会社「ジェーン・ストリート・キャピタル」でキャリアをスタートさせました。

その後、自ら暗号資産のトレーディング企業を設立し、2019年にFTXを創業。豊富な商品ラインナップと使いやすい取引環境を武器に、急速にグローバル展開を進め、業界の注目を集めました。

また彼は、自身の資産を社会貢献に役立てる慈善活動や政治献金などを通じて影響力を拡大。自らの信念を公言する姿勢も話題となりました。

一方で、アラメダリサーチの資金の流れや経営実態については後に大きな疑問が浮上し、本人のリーダーシップと倫理観に対する評価は大きく揺らぐことになります。それでも、当時の彼は仮想通貨業界の未来を担う人物として、広く期待を寄せられていました。

FTX破綻事件の経緯

2022年11月11日、FTXは米連邦破産法第11条の適用を申請し倒産に至りました。業界全体に衝撃を与えた「FTX事件」として、仮想通貨史上最も深刻な危機の一つとされています。

以下に、破綻に至るまでの主要な出来事を時系列でまとめます。

破綻の直接的な引き金となったのは、BinanceによるFTT売却とその後の買収撤回です。特に、ジャオ氏が2022年11月6日にX（旧Twitter）上でFTT売却を公表したことは、FTXの財務健全性に対する市場の疑念を一気に加速させました。

As part of Binance’s exit from FTX equity last year, Binance received roughly $2.1 billion USD equivalent in cash (BUSD and FTT). Due to recent revelations that have came to light, we have decided to liquidate any remaining FTT on our books. 1/4

— CZ 🔶 BNB (@cz_binance) November 6, 2022

さらに、翌8日に発表された買収意向は市場を一時的に落ち着かせたものの、Binance側は翌日には買収を撤回。「顧客資金の不正使用と規制上のリスク」が理由として挙げられました。

Binenceの買収撤回を受け、FTXは資金繰りが完全に行き詰まり、わずか数日で破産申請に追い込まれる結果となりました。

破綻発表から現在までの流れ

FTX破綻後、創業者サム氏に対する刑事訴追が進む一方で、グループ全体の清算および債権者への返済プロセスも継続しています。

以下に、2022年の破綻発表から2025年6月時点までの主な動きを時系列でまとめます。

FTX事件は、暗号資産業界における透明性の欠如やガバナンスの脆弱さといった構造的な問題を改めて浮き彫りにしました。

顧客資産の不正流用、企業間の利益相反、内部統制や監査体制の不備など、信頼を損なう要因が相次いで明るみに出たのです。

FTX事件をきっかけに、業界全体には、より厳格な規制と透明性の高い運営体制の整備が求められるようになりました。

破綻後のFTX・規制当局の対応

2022年11月の破産申請後、ジョン・J・レイ三世が新CEOに就任し、関連会社130社以上の財務調査と資産回収が開始されました。これまでに複数の資産が差し押さえられ、一部の債権者への返済も始まっています。

FTX.comとFTX.USでは法的立場が異なるため返済スキームにも差があり、FTXトークンの取り扱いも含め、最終的な返済額や時期は未定のままです。2025年6月時点でも清算作業は続いており、サム氏への最終判決は年内に言い渡される見通しです。

一方、アメリカでは証券取引委員会（SEC）や商品先物取引委員会（CFTC）、司法省がサム氏を詐欺や資金洗浄などで起訴し、経営陣を激しく批判しています。SECとCFTCは、FTXが未登録の証券やデリバティブを提供していた点を問題視しており、暗号資産業界全体への規制強化を求めています。

また、バハマ当局も資産保全やライセンスの管理強化に乗り出し、ヨーロッパではMiCA規制の導入が前倒しで進行。日本国内でも、自主規制団体がガイドラインを見直し、内部管理体制の強化が図られています。

FTX事件が仮想通貨業界に与えた影響

FTXの経営破綻は仮想通貨業界全体に深刻な衝撃を与えました。特に、ジャオ氏が11月6日にFTT売却の意向をXで公表したことが引き金となり、財務状況への不信感が一気に市場へと広がりました。

その結果、11月8日から9日にかけてビットコイン価格は急落。アルトコイン市場にも、影響は波及しました。

ビットコイン価格は11月上旬に2万ドル近辺で推移していたものの、FTXの破産直後に一時15500ドルまで急落。ビットコインの動向は、FTX事件が単なる一企業の問題にとどまらず、暗号資産市場全体の信頼に大きな不安をもたらしたことを物語っています。

上記の通り、FTX事件はブロックチェーン上で透明性が高いとされるビットコインでさえも、信頼性の揺らぎによって大きな価格変動が起こることを示しました。

加えて、マイナー（採掘者）たちは価格下落による採算性の悪化に直面し、ビットコインマイニングへの影響も避けられませんでした。

一方で、このような危機を受け、暗号資産業界では規制強化、分別管理の徹底、監査体制の整備といった信頼性向上への取り組みが急速に進み始めました。

FTX事件が起きた原因と背景

FTX事件は、単なる経営ミスや資金繰りの失敗にとどまらず、仮想通貨取引所としての構造的な欠陥や、ガバナンス不全、さらにはグローバルな規制の空白地帯といった、複合的な要因が絡み合った末に引き起こされたものでした。

以下では、その根本的な原因を3つの観点から詳しく解説します。

• FTXとアラメダリサーチ間の利益相反と不透明な流れ
• FTTに依存した脆弱な財務構造
• 規制の不在と監査体制の甘さ

FTXとアラメダリサーチ間の利益相反と不透明な流れ

創業者サム氏は、FTXの経営と並行して姉妹会社アラメダリサーチの実質的な経営権も掌握していました。両社は建前上は独立した法人でしたが、実際には密接な関係にあり、巨額の資金移動が両者間で日常的に行われていたとされています。

特に、顧客資産がAlamedaの投資損失補填に流用されていた疑いは、コンプライアンス上重大な問題であり、プラットフォームの信頼性を根本から揺るがす行為です。さらに、取締役会の機能不全や内部監査の不備といったガバナンス体制の欠如が、不正を長期にわたって見過ごしていた原因として指摘されています。

FTTに依存した脆弱な財務構造

FTXが発行していたFTTは、手数料割引や担保資産としての利用、バーン（焼却）による価格維持といったエコシステムの中核を担う役割を果たしていました。しかし、FTXとアラメダリサーチの財務はこのFTTに過度に依存しており、実態としては流動性の乏しいFTXトークンを資産評価の根拠にしていたことが問題となりました。

2022年11月6日、ジャオCEOが「FTTを全て売却する」とX（旧Twitter）上で発表したことで、FTT価格は急落。FTT価格の暴落により、アラメダリサーチとFTXの資産評価が実質的に破綻。結果的に「実態のない担保」によるレバレッジ経営のリスクが顕在化しました。

規制の不在と監査体制の甘さ

FTXは規制の緩い地域を中心に国際的な事業展開を行っていました。アメリカ市場向けには「FTX.US」を別法人として運営していましたが、実態としてはグループ全体の資金運用が不透明な形で行われており、SECやCFTCなどの主要規制当局の監督が十分に及んでいなかったと見られています。

加えて、組織内部には外部監査人や法務・コンプライアンス担当が不在、または機能しておらず、基本的な内部統制も欠落していました。帳簿上の不整合や資産管理のずさんさも後に発覚しており、こうした管理体制の甘さが破綻を防げなかった大きな要因として挙げられます。

FTX破綻事件の最新情報

2025年6月時点において、FTX事件をめぐる動きとして、主に「顧客・債権者への返済の本格化」と「他社との法的係争の進展」の2つが注目されています。

債権者への返済が本格化

2025年5月末より、清算チームによる顧客や債権者への返済が本格的に始まりました。これにより、破綻時にFTXに資金を預けていた多くの利用者への資金返還が進んでいます。

中でも注目されているのが、返済額が請求額を上回るケースが続出している点です。報道によれば、返済率は元本比で119〜143％に達しており、FTXの保有資産の回収・評価が予想以上に好調だったことが背景にあります。

事件発覚当初は、数十億ドル規模の損失が発生するとの見方もあったため、この返済状況は市場関係者にとって意外性のある、明るいニュースとなりました。

Three Arrows Capital（3AC）との係争が継続

一方で、法的なトラブルは続いており、特に暗号資産ヘッジファンド「Three Arrows Capital（スリー・アローズ・キャピタル）」との係争が注目されています。

スリー・アローズ・キャピタルは、FTXに対して15億3000ドルの資金返還を要求していますが、FTX側はこの請求に対して全面的な棄却を裁判所に申し立てています。この件は2025年8月12日に米連邦破産裁判所での審理が予定されています。

この係争の行方は、暗号資産業界における破綻処理や債権回収の在り方に大きな影響を及ぼす可能性があり、今後の展開に注目が集まっています。

FTX破綻から学ぶ取引所選びの注意点

FTX事件は、顧客資産の不正流用やガバナンスの不備など、内部構造の脆弱さが明るみに出たことで、取引所選びの重要性を改めて考えるきっかけとなりました。

今後、FTX事件のような破綻リスクを避けるためには、以下の3つの観点から仮想通貨取引所を慎重に見極めることが重要です。

• ユーザー資産が適切に分別管理されているか
• 第三者監査を受けているか
• 経営陣やガバナンス体制の透明性があるか

ユーザー資産が適切に分別管理されているか

ユーザー資産を自社の運営資金とは別に管理する「分別管理」は、取引所を選ぶ際に最も基本的かつ重要な信頼性の指標となります。FTXではこの原則が守られず、顧客資金が姉妹会社アラメダリサーチの損失補填に流用されたとされ、信頼を大きく損なう結果となりました。

もし分別管理を行っていなければ、万が一破綻した際に顧客資金が返還されないリスクもあります。資産管理の体制が明示されているか、情報開示の有無を確認した上で取引所を選ぶことが、資産保全には重要な要素です。

第三者監査を受けているか

信頼性を判断するうえで、各国の金融ライセンスの取得状況や、外部監査の有無は非常に重要な判断材料です。金融ライセンスを取得していれば、業務内容や財務状況に対する監督や監査が定期的に実施され、不正の発見や是正につながります。

一方、FTXは規制の緩いバハマを拠点としており、国際的な監督体制の外に位置していたことが、不正を長期的に見逃す原因にもなりました。取引所を選ぶ際は、どの国の規制下で運営されているのか、どのような監査体制を敷いているのかを確認し、透明性のある運営を行っているかを見極めましょう。

経営陣やガバナンス体制に透明性があるか

知名度が高い取引所であっても、経営責任者や内部統制体制が不透明な場合は注意が必要です。創業者サム氏が実質的にすべての意思決定を掌握しており、社内に実質的な監視機能が存在していませんでした。

ガバナンス体制の欠如は、企業の暴走や不正行為を招く温床になります。運営方針や経営メンバーの情報が公開されているか、外部からのチェック機能が備わっているかを事前に確認することが、安心して取引を行うための重要な判断基準となります。

まとめ

FTXは2019年に設立された仮想通貨取引所で、革新的なデリバティブ商品や使いやすい取引環境によって、世界第2位の取引所へと急成長を遂げました。

しかし2022年11月11日、姉妹会社アラメダリサーチとの不透明な資金関係や内部統制の欠如、FTTへの過度な依存などが原因となり、突如経営破綻に追い込まれました。

創業者サム氏は詐欺などの容疑で起訴され、現時点においても裁判が続いています。一方、破綻後のFTXでは新たな経営陣のもと清算と資産回収が進められ、2025年には債権者への返済も本格的に始まっています。

FTX事件は、取引所における信頼性と、健全なガバナンス体制の重要性を改めて浮き彫りにした事件といえます。Web3の世界で取引所を選ぶ際は、ユーザー資産の分別管理、外部監査の有無、経営体制の透明性といった観点から慎重に判断することが不可欠です。

FTXとは？に関するよくある質問