イーサリアム財団はzkEVMの戦略を速度重視から安全性重視へ転換する。2026年末までに128ビットの証明可能なセキュリティ達成を目指す。
イーサリアム財団は18日、zkEVM実装における戦略的焦点を処理速度から暗号学的セキュリティへと転換すると明かした。
財団は公式ブログで、形式的に検証された健全性がなければ、高速な証明も重大なリスクになると指摘している。攻撃者が状態を書き換える可能性を排除するため、新たな方針を打ち出した。
これまでのzkEVMエコシステムはレイテンシーの短縮に注力し、証明時間を16分から16秒へと劇的に短縮させてきた。コストも45分の1に低下したが、今後は方向性を修正する。
財団は推測に基づく安全性ではなく、証明可能な安全性こそがL1利用における唯一のゴールだと明言している。これは開発コミュニティにとって大きな転換点となる。
2026年に向けた具体的なロードマップ
新たなロードマップでは、Web3基盤としてのzkEVM実装について、2026年末までに128ビットの証明可能なセキュリティを達成するため、3つのマイルストーンが設定された。
最初のステップとして、2026年2月までにセキュリティ評価ツール、soundcalcを統合する。続く5月には、コードネームGlamsterdamと呼ばれる段階へ移行する。ここでは、証明サイズを600KB未満に抑えつつ、少なくとも100ビットのセキュリティ確保が求められる。
最終段階となる12月のH-starでは、128ビットのセキュリティと300KB未満の証明サイズ達成が必須となる。さらに、再帰トポロジーに関する形式的なセキュリティ証明も必要だ。
ハードウェア要件についても具体的な数値が示されている。約10万ドルかつ10キロワット以内で稼働するハードウェアを用い、メインネットブロックの99%を10秒以内に証明する必要がある。
機関投資家の採用を見据えた基盤強化
今回の方針転換の背景には、イーサリアムを機関投資家向けの金融決済レイヤーとして確立させる狙いがある。金融機関にとって、暗号学的な厳密さは譲れない条件である。
財団の研究によれば、形式的検証を欠いた既存のセキュリティ前提には脆弱性が残るという。最近の暗号解読技術の進歩により、安全性の評価基準を見直す必要が生じていた。
128ビットという基準は、現在の計算能力では攻撃者が現実的に突破不可能なレベルとされる。主要な暗号学団体や学術文献の基準に合わせた設定だ。
この取り組みは、パフォーマンス重視のプロトコルから、数学的に厳密な決済レイヤーへの進化を意味する。すべての主要なzkEVM実装が同時に目標を達成できるかは不透明だが、業界全体の基準を引き上げる動きとなる。
こうした技術的転換は、特定のプロジェクトにとどまらず、ブロックチェーン技術全体の信頼性向上を目指す取り組みの一環と位置付けられる。
next