ビットコインマイニング企業が次々とAI事業へ参入。電力やデータセンター資源を活用し、価格変動に左右されない安定収益を追求する。
世界のビットコイン(BTC)マイニング企業上位10社のうち7社はこのほど、弱気市場を乗り切るためにAI 関連の収益に依存していることが明らかになった。
暗号資産(仮想通貨)情報サイトのCryptoSlateの報告によると、マラソンやクリーンスパーク、アイリスエナジー、テラウルフ、コア・サイエンティフィックを含む7社が、すでにAIや高性能コンピューティング事業を開始、あるいは収益化している。
残る3社も同様の取り組みを計画中だという。
マイニングからAIへ、収益構造の転換
CryptoSlateの分析では、多くのケースでAIホスティングからの収益が従来のマイニングによる収益を上回っていることが示された。メガワットあたりの年間収益は、従来のマイニング事業を約50%上回る。
この動きは、仮想通貨マイニング業界のビジネスモデルが根本的に変化していることを表す。
マイニング企業は、既存のインフラや電力リソース、データセンター能力を仮想通貨のマイニングのみに頼るのではなく、AIのワークロードを処理するために活用している。
この戦略転換により、ビットコインマイニング企業の評価方法も変化している。従来の計算能力ランキングに代わり、AI 契約と安定したキャッシュフローが新たな評価指標として重視されるようになった。
戦略転換を後押しする経済的要因
マイニング事業からAIへの戦略的転換は、主に長期化するビットコインの弱気市場が背景にある。ビットコイン価格の低迷と競争の激化により、従来のマイニング事業の収益性が大幅に低下した。
さらに、マイニング事業に影響を与える電力不足や、AIコンピューティングインフラに対する世界的な需要の急増も、この動きを加速させている。
AIホスティングは、価格変動に左右される仮想通貨マイニングとは異なり、より安定的で予測可能なキャッシュフローを提供する。
この安定性は、企業が負債市場へアクセスしやすくなる利点をもたらすとともに、仮想通貨長期保有のリスクヘッジとしても機能している。
マイニング企業は、発電設備や冷却システム、データセンター施設といった既存のインフラを流用することで、大規模な事業改革を必要とせずにAI関連ビジネスへの転換を加速させることが可能だ。
テラウルフやコア・サイエンティフィックなどの企業は、AIワークロード向けの長期ホスティング契約を確保している。
一部企業はAIキャンパス開発のために数百メガワットの容量を確保したと報じられており、ビットディアーも戦略的提携を通じてAI能力を拡大した企業の一つとして挙げられる。
この多様化戦略は、長期的な弱気市場を乗り切るための必要な適応策として、業界のコンセンサスになりつつある。
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