米コインベースは、DEX統合機能をブラジルへ拡大すると発表。現地の規制に準拠しつつ、アプリ内で1万種類以上のトークン取引が可能に。
米大手仮想通貨取引所コインベースは20日、分散型取引所(DEX)統合機能、DeFi Mulletをブラジル市場に拡大すると発表した。
この機能により、ブラジルのユーザーはコインベースアプリを離れることなく、ユニスワップやエアロドロームなど主要DEXで取引できる。基盤は同社レイヤー2ネットワークのBaseで、1万種類以上のトークンにアクセスできる。
DEXの複雑な手順を省き、複数DEXから最適価格を自動提示するアグリゲーターとして機能する。
コインベースのブライアン・アームストロングCEOは「オンチェーン取引はますます身近になっている」と述べ、米国市場での成功に続き、ブラジルでも同様の利便性を提供する意欲を示した。
ユーザーは自己管理型ウォレットを使用しながらも、ネットワーク手数料を気にすることなく取引を行える環境が整うことになる。
厳格化するブラジルの規制環境への対応
今回のブラジル展開は、現地での仮想通貨規制が大幅に強化される中で行われた。ブラジル中央銀行は現在、仮想通貨企業に対して銀行と同等の監督権限を行使しており、ライセンス取得や国際取引の報告義務を課している。
特に、最大700万ドルの資本要件や、海外プラットフォームに対する現地法人の設立義務など、参入障壁は高まっている。
さらに、ブラジルでは月間の免税枠を超える利益に対して17.5%の税金が課されるほか、ステーブルコインを用いた輸入代金の決済など、国境を越えた取引への監視も厳しくなっている。
当局は年間300億ドル規模の輸入がステーブルコインを通じて行われていると推計しており、税関の抜け穴を塞ぐ構えだ。
コインベースはこうした規制要件を遵守しつつ、2億1500万人の人口を抱える巨大市場へのアクセス確保を狙っている。
「スーパーアプリ」化と市場動向
コインベースは、あらゆる金融取引を一つのアプリで完結させるスーパーアプリ化を掲げている。
今回の機能拡大もその一環であり、サークル社のステーブルコイン、USDCの普及や、トークン化された株式、予測市場へのアクセスなど、多角的なサービス展開を進めている。
また、同社は財務戦略としてビットコイン(BTC)の保有も強化しており、2025年第3四半期には2772BTCを追加購入し、保有総額は1万4548BTC、評価額にして13億ドルに達した。
一方で、市場環境は依然として不透明感が漂っている。2025年のビットコイン価格は一時的に上昇分を失い、11月初旬には9万3029ドルまで下落した。
市場の恐怖と強欲指数は10ヶ月ぶりの低水準を記録しており、アナリストは利益確定売りやマクロ経済の不確実性が背景にあると指摘している。
コインベースの株価も年初とほぼ同水準で推移しており、ブラジルへの事業拡大が今後の業績回復の起爆剤となるか注目が集まっている。
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