欧州委員会が仮想通貨取引所など金融インフラの監督をESMAに集中させる計画を推進。市場の断片化を解消し、EUの競争力強化を目指す。
欧州委員会は2日、株式や暗号資産(仮想通貨)の取引所、清算機関といった主要な金融インフラに対する中央集権的な監督を拡大する準備を進めていると明らかにした。
この動きは、市場の分断を解消し、EUの国際競争力を強化する目的がある。
EU版SEC創設へ、ESMAの権限を拡大
欧州委員会は、資本市場同盟戦略の一環として、欧州証券市場監督局(ESMA)への権限集中を計画している。国境を越えて活動する仮想通貨取引所や伝統的な金融機関の監督を合理化し、加盟国間の規制の断片化を解消することが狙いだ。
これにより、米国証券取引委員会(SEC)のような単一の監督フレームワークの創設を目指す。
公式報告によると、関連する提案は2025年12月に市場統合パッケージの一部として正式に発表される見込みだ。この中央集権化の動きは、既存の仮想通貨市場規制(MiCA)フレームワークを基盤としている。
ESMAは現在、2024年12月までに仮想通貨のホワイトペーパーとサービスプロバイダーの暫定登録簿を準備中だ。
また、欧州銀行監督局は2025年6月、企業が新要件に適応するための移行期間を2026年3月まで与える「ノーアクションレター」を発行した。しかし、規制当局は管轄区域間で重複する規制の調和に課題があることを認めている。
加盟国間で意見対立、規制とイノベーションの緊張高まる
この中央集権化構想に対し、EU加盟国の間では意見が分かれている。ドイツとフランスは、グローバルに競争できる統一された欧州資本市場を創設するために不可欠だとして、この監督モデルを強力に支持している。
一方で、ルクセンブルクやアイルランドといった金融ハブは、監督上の自主性が失われ、国内金融セクターの競争力が低下する可能性を懸念している。
欧州監督当局の2026年作業計画では、技術的な要因の重要性が指摘されている。2025年末までにEU金融セクターにとって重要なサードパーティプロバイダーを指定し、デジタルオペレーショナルレジリエンス法の枠組みの下で新たな機能を推進する予定だ。
この動きは、分散型システムの基盤となるブロックチェーン技術の監督強化も意味する。規制の安定性とイノベーションの間では緊張が高まっている。
支持者は、標準化された監督が信頼を醸成し、参加を促すと主張するが、批判者は官僚的な複雑さが仮想通貨のイノベーションをより寛容な地域へ追いやる可能性があると警告する。
2024年3月に承認されたユーロシステムのサイバーレジリエンス戦略は、この中央集権的監督の技術的基盤を築くものとなる。
MiCAに続く包括的な規制、サイバーセキュリティも強化
今回の監督拡大は、決済システムの監督要件を定めるSIPS規則(2025年7月2日施行)など、より広範な規制動向と連動している。
欧州監督当局合同委員会は2026年の具体的な成果物として、「EUレベルでの重要なICTサードパーティサービスプロバイダーの年次リスト」や「重大なICT関連インシデントに関する年次報告書」を挙げており、これらが実施のタイムラインを形成する。
この計画には、ステーブルコインの活動や市場操作を標的としたリスクベースの監視メカニズムが含まれており、仮想通貨セクターのシステミックリスクを抑制することを目指している。
また、TIBER-EUのようなサイバーレジリエンスの枠組みとも連携する。これは、高度なサイバー脅威に対する金融機関の保護、検知、対応能力をテストするためのフレームワークだ。
2025年12月の提案期限が迫る中、この構想の行方は欧州の金融規制の将来を根本的に変え、EUが参加者保護と金融イノベーションのハブとしての競争力維持を両立できるかの試金石となるだろう。
このような包括的な規制は、安全な仮想通貨投資環境の整備を目的としている。
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