香港で上場企業の仮想通貨保有が規制され、DATモデルが行き詰まり。一部企業はオンラインポーカーやカード事業にシフトしている。
香港の規制当局は11月、上場企業による暗号資産(仮想通貨)の大量保有戦略を事実上禁止する措置を講じた。
香港証券先物委員会(SFC)と香港取引所(HKEX)は、少なくとも5社の上場企業に対し、デジタル資産トレジャリー(DAT)モデルへの移行を阻止したと報じられている。
DATモデルとは、企業の財務資産としてビットコインなどを大量に保有する戦略であり、米マイクロストラテジーの成功を受けて世界的に注目されていた。
しかし、香港当局はこうした企業が実質的な「キャッシュ・カンパニー」となり、上場規則に抵触するとの懸念を強めている。
当局が介入した背景には、個人投資家の保護がある。報道によると、DAT関連企業への投機的な動きにより、個人投資家は約170億ドルの損失を被った可能性があるという。
企業の実態以上に株価が過大評価されるリスクや、市場のボラティリティが経営に与える影響が問題視された形だ。
ポーカーやポケモンカードへの事業転換も
DATモデルの維持が困難になったことで、一部の企業は全く異なる分野への方向転換を余儀なくされている。仮想通貨保有戦略を断念した企業の中には、オンラインポーカーやポケモンカード市場への参入を計画する動きもあるという。
これは、規制の壁に直面した企業が新たな収益源を求めて迷走している現状を浮き彫りにしている。企業としては、変動の激しい仮想通貨投資のリスクを避ける狙いがあるようだ。
DATモデルを採用した企業の多くは、2025年に入りビットコイン価格の下落とともに株価が低迷した。金やナスダック市場と比較してもパフォーマンスが悪化しており、リスク回避の動きが強まっている。
SFCは現在、仮想通貨を保有する上場企業に対して、新たなガイドラインの策定が必要かどうかを検討している段階だ。
アジア全域で強まる監視
この規制強化の流れは香港に限った話ではない。
インドやオーストラリアの証券取引所も同様に、企業がバランスシートの大部分を仮想通貨で保有することに難色を示している。アジア太平洋地域全体で、DATモデルに対する逆風が吹いている状況だ。
専門家は、DAT企業が資産の売却や自社株買いを余儀なくされている現状を、このビジネスモデルの限界と指摘している。
一部の企業は、より規制の緩いニュージーランドなどへの移転を検討し始めているが、かつてのブームは急速に冷え込みつつある。
それでも市場参加者は、仮想通貨バブルの再来を期待して動向を注視している。
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