JPモルガンは、ステーブルコイン市場の成長は仮想通貨市場全体に連動すると分析。1兆ドル規模への到達は現実的でないとの見解を示した。
米金融大手JPモルガンの調査部門であるJPモルガン・グローバル・リサーチは18日、ステーブルコイン市場の将来予測に関するレポートを公表し、2028年までに市場規模が1兆ドルに達するとの楽観的な見方を否定した。
同社は、市場規模が今後数年間で現在の水準から2〜3倍に拡大する可能性はあるとしつつも、急成長するシナリオは現実的ではないと指摘した。
その上で、2028年時点の市場規模については、5000億〜6000億ドル程度にとどまるとの予測を示している。
市場規模の現実的な予測
同社の米国短期デュレーション戦略責任者であるテレサ・ホー氏は、市場には2028年末までに2兆ドル規模に成長するとの見方もあるものの、「やや楽観的すぎる」と指摘する。
ホー氏は、ステーブルコイン市場の成長は今後数年間で現在の規模から2〜3倍程度にとどまる可能性が高いとし、その背景として、同市場が依然として暗号資産(仮想通貨)市場全体の動向に強く依存している点を挙げた。
同社の分析によれば、ステーブルコインは主に仮想通貨の売買や取引の円滑化に用いられており、仮想通貨全体の時価総額が拡大しなければ、単独で爆発的な成長を遂げるのは難しいという。
現在、米ドル建てステーブルコイン市場は約3000億ドル規模で、テザーとサークルの2社が約9割のシェアを占めている。
成長を左右する要因と課題
JPモルガンは、ステーブルコイン市場の需要が依然としてデリバティブ取引やDeFi、仮想通貨取引所での利用といったクリプトネイティブな用途に集中していると指摘する。
決済手段としての利用も拡大しているが、市場規模全体を大きく押し上げる要因にはなりにくいとの見方だ。
また、中央銀行デジタル通貨(CBDC)や銀行主導のブロックチェーン決済などの台頭も、今後の成長にとっての制約要因になり得るとしている。
一方で、新興国を中心に、自国通貨の不安定さを背景とした米ドル建てステーブルコインへの需要は重要な成長要因だと分析した。規制整備の進展が、採用拡大を後押しする可能性もある。
同社株式アナリスト、ケネス・ワーシントン氏は、同社が追跡するステーブルコインのバスケットの時価総額が6月末時点で前月比2%増となり、7カ月連続で増加した点を明らかにした。
ただし、現在の予測を上回る成長を実現するには、ステーブルコインが仮想通貨市場への依存を低減し、伝統的な金融や日常的な決済分野へと利用範囲を拡大する必要がある。
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