レジャーが企業向けiOSアプリを公開。トロンブロックチェーンにネイティブ対応し、機関投資家のステーブルコイン取引のセキュリティと利便性を向上。
ハードウェアウォレット大手のLedgerは10日、企業顧客向けのiOSモバイルアプリケーションを正式にローンチした。
このアプリは、同社の機関投資家向けプラットフォームLedger Enterpriseの機能を拡張するもので、新たにトロン(TRX)ブロックチェーンへのネイティブ対応も追加した。
これまでLedger Enterpriseはデスクトップ版のみの提供であったため、モバイルでの取引を求める顧客にとって利便性が大きく向上する。
機関投資家の需要に応えるモバイルソリューション
今回のアップデートにより、企業顧客はトロンやUSDTなどのTRC20トークンをモバイル端末から直接管理できるようになる。
Ledger社は、ハードウェアレベルのクリア署名や改ざん防止機能を備えたLedger Staxデバイスを用いた承認など、同社がハードウェア強制のセキュリティと呼ぶ厳格な安全対策が実装されていると説明している。
Ledgerのセバスチャン・バドーエンタープライズ担当副社長は、このモバイルソリューションが「時間に制約のあるステーブルコイン送金に対して、厳格なセキュリティ管理を維持しつつ迅速な承認を提供する」と述べた。
これは、機関投資家が暗号資産(仮想通貨)運用において直面する重要な課題に対応するものだ。
トロン対応の戦略的意義
トロンのサポートは戦略的に重要だ。トロンは、国境を越えたステーブルコイン送金の主要ネットワークとなっており、USDTの取引額は約800億ドルに達している。
バドー氏は、「特にアジアや新興市場において、トロンは大量の国境を越えるステーブルコイン送金で利用されるブロックチェーンだ」と強調した。
これは、レジャーがトロンのインフラが普及している世界の機関投資家市場に焦点を当てていることを示している。
同社は、承認の遅延が機会損失や市場のボラティリティへのエクスポージャーといった間接的なコストにつながることを指摘し、モバイルソリューションがこれらのリスクを軽減すると期待している。
また、今回のモバイルアプリの提供はiOSが先行して行われた。
バドー氏によると、「ほとんどの顧客がAppleデバイスを使用しているため」であり、顧客のデバイス選好がプラットフォームの選択に影響を与えた。
アンドロイド版のサポートも将来的には検討されている。この新機能は機関投資家向けのLedger Enterprise限定であり、個人向けアプリLedger Liveのユーザーには適用されない。
next