ルクセンブルクの政府系ファンドが、ユーロ圏で初めて資産の1%をビットコインETFに割り当てた。国のデジタル金融戦略の一環。
ルクセンブルクの世代間ソブリン・ウェルス・ファンド(FSIL)は9日、保有資産の1%をビットコインETFに割り当てたと明かした。
ユーロ圏の国家レベルのファンドによる暗号資産(仮想通貨)関連商品への資産配分は、これが初めての事例となる。
この決定は、同国のジル・ロート財務大臣が議会で2026年度予算案を提示した際に明らかにされた。ルクセンブルク財務省のボブ・キーファー長官が公式声明でその内容を伝え、国の革新的な金融政策を象徴する動きとして注目されている。
ユーロ圏初の国家レベルでのビットコインETF参入
FSILの運用資産総額は2025年6月30日時点で約7億6400万ユーロ(約8億8800万ドル)に上る。今回の配分は総資産の1%にあたり、金額に換算すると約900万ドル相当となる。
この動きは、2025年7月にルクセンブルク政府によって承認されたファンドの新しい投資方針に基づいている。
この新方針により、FSILは規制された金融商品を通じて仮想通貨への資産配分が可能となった。
直接的な仮想通貨の保有ではなく、ビットコインETFという間接的な手法を選択したことで、資産管理や規制遵守といった課題に対応しつつ、デジタル資産市場への参入を実現した形だ。
デジタル金融におけるリーダーシップの表明
キーファー長官は、今回の決定について「この新しい資産クラスの成熟度の高まりを認識し、デジタル金融におけるルクセンブルクのリーダーシップを強調するものだ」と述べた。
欧州のフィンテックハブとしての地位を確立しようとする同国の戦略的な意図がうかがえる。
フィンランドや英国などが主に犯罪収益として押収したビットコインを保有しているのに対し、ルクセンブルクの事例は、仮想通貨を正当な資産クラスとして意図的にポートフォリオに組み入れた点で大きく異なる。
1%という限定的な配分比率は、革新を追求しながらも、世代間の富の保全というファンドの主要な使命を重視する慎重な姿勢を反映している。
政府系ファンドの新たな潮流となるか
FSILの改定された投資方針では、プライベートエクイティや不動産と並ぶオルタナティブ投資の一部として、仮想通貨に最大15%まで資産を割り当てることが認められている。
初回が1%に留まったことは、ファンドが保守的な実行戦略を取っていることを示している。
この動きは、2025年初頭に間接的なビットコインへのエクスポージャーを増やしたノルウェーの政府系ファンドの事例に続くものだ。
世界のソブリン・ウェルス・ファンドが、規制されたチャネルを通じて慎重に仮想通貨市場へ参入する大きな流れの一部と見ることができる。
ルクセンブルクのこの一歩は、他の欧州諸国の政府系ファンドが将来の資産配分を検討する上で、重要な先例となる可能性がある。
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