SBIとスターテイルが円建てステーブルコインの共同開発で合意。送金制限のない信託型を採用し、企業間決済やAI活用を視野に入れる。
SBIホールディングスとスターテイルグループは16日、日本の法規制に準拠した円建てステーブルコインを共同開発するための基本合意書を締結したと明かした。
規制に準拠した「信託型」を採用
両社が目指すのは、改正資金決済法に基づく電子決済手段のうち、信託型と呼ばれる3号電子決済手段だ。これは、発行体が信託銀行となるスキームである。
この信託型スキームには大きな特徴がある。2025年10月に発行されたJPYCなどが採用する1号電子決済手段とは異なり、送金や保有に100万円の上限が設けられていない点だ。
これにより、大口の企業間決済や高額な取引にも対応可能となる。
具体的な役割分担も明らかにされた。ステーブルコインの発行および償還は、SBI新生銀行の完全子会社である新生信託銀行が担当する。また、暗号資産(仮想通貨)取引所のSBI VCトレードが、電子決済手段等取引業者として流通を担う予定だ。
一方、スターテイル・グループは技術面を主導する。スマートコントラクトやAPIの設計、セキュリティシステムの構築など、ブロックチェーン技術に関わる開発を担当する。SBIグループが持つ金融規制への知見と、スターテイルの技術力を融合させる狙いだ。
AI決済やトークン経済圏の拡大へ
今回の提携は、単なる決済手段の提供にとどまらない。両社は、伝統的な金融システムとブロックチェーン技術を架橋するインフラの構築を目指している。
SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長は、この提携により「既存金融と融合したデジタル金融の提供を劇的に加速させる」と述べている。
スターテイル・グループの渡辺創太CEOも、このステーブルコインが近い将来実現するAIエージェント間の決済や、トークン化資産の配当に活用される可能性を示唆している。
AIが自律的に経済活動を行う未来を見据えた動きだ。
日本政府は現在、トークン経済の推進を国家戦略として掲げている。今回のプロジェクトは、安全性と透明性を確保したデジタル円のエコシステムを構築し、現実資産(RWA)のトークン化市場を活性化させる狙いもある。
このステーブルコインは、国内だけでなくグローバルな市場との統合も視野に入れている。信託型の構造を採用することで、クロスボーダー取引や機関投資家による利用が容易になるからだ。
日本発のWeb3金融インフラとして、国際的な競争力を持つことが期待されている。
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