イングランド銀行のベイリー総裁が、規制なきステーブルコインの普及は経済の安定を損なうと警告。特に「デジタルドル化」のリスクに懸念を示した。
イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は3日、ステーブルコインの普及が規制なしに進む場合、経済の安定に深刻な影響を及ぼす可能性があると警告した。
ベイリー総裁は、ロンドンで開催された金融関連の会合で講演した。その中で、暗号資産（仮想通貨）の一種であるステーブルコインがもたらす潜在的なリスクについて、深い懸念を表明した。
特に、民間企業によって発行されるステーブルコインが広く決済手段として利用される未来に警鐘を鳴らした。総裁は、これが金融の安定性を根底から揺るがしかねないと指摘する。
「デジタルドル化」への強い懸念
ベイリー総裁が最も懸念しているのは、「デジタルドル化」として知られる現象である。これは、米ドルなどの外貨に価値が連動するステーブルコインが国内で普及し、自国通貨である英国ポンドに取って代わる事態を指す。
もしこのような状況が現実となれば、イングランド銀行が物価の安定や経済全体の調整のために行う金融政策の有効性が著しく損なわれる恐れがある。
通貨主権が民間企業に奪われることへの危機感をあらわにした形だ。そもそも暗号資産は国家による価値の保証を持たないため、その普及は金融政策の根幹を揺るがしかねない。
総裁は「もし規制されていないステーブルコインが決済システムとして定着すれば、金融の安定は深刻な脅威にさらされるだろう」と述べ、予防的な規制の重要性を訴えた。
厳格な規制と国際協調の必要性
この問題に対処するため、ベイリー総裁はステーブルコインの発行者や関連サービスを提供する企業に対し、銀行に課せられるものと同水準の厳格な規制を適用すべきだと主張した。
利用者の資金を保護し、システミックリスクを防ぐためには、資本要件や流動性管理、ガバナンス体制など、包括的な監督が必要不可欠だとの考えを示した。これは、利用者の信頼を確保する上でも重要となる。
また、ステーブルコインは国境を越えて瞬時に取引されるため、一国だけの規制では不十分であると指摘。各国の中央銀行や規制当局が連携し、国際的に整合性の取れたルールを策定する必要性を強調した。この国際的な性質は、分散型台帳技術であるブロックチェーンとは切っても切れない関係にある。
イングランド銀行は、中央銀行デジタル通貨（CBDC）である「デジタルポンド」の発行も検討しているが、これは民間ステーブルコインと競合するものではなく、共存可能だとの立場を示している。
今回の警告は、技術革新を否定するものではなく、あくまで金融システムの安定を維持するための枠組み作りを求めるものだ。
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