バイナンスがスペイン銀行BBVAと提携し、顧客資産をオフラインで保管するサービスを開始する。FTXのような破綻を防ぐ狙い。
暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスは8日、スペイン第3位の銀行BBVAと提携し、顧客資産を取引所外で保管するカストディサービスを開始した。
顧客資産は米国債の形でBBVAが管理し、これをバイナンスが取引の証拠金として受け入れる仕組み。
取引活動と資産保管を明確に分離することで、取引所の破綻リスクから顧客資産を守る。
FTX破綻後の信頼回復策
2022年11月のFTX破綻では、数十億ドル相当の顧客資産が凍結され、中央集権型取引所への不信感が業界全体に広がった。
FTXは顧客資産を自社の帳簿上で管理し、企業資産との分離も行っていなかった。
さらに姉妹会社のアラメダ・リサーチが顧客資産にアクセスできる状態にあり、これが大規模な資金流用につながった。
バイナンス自身も2023年に米規制当局から43億ドルの罰金を科された。
マネーロンダリング対策の不備が指摘されたことで、同社にとって信頼回復は最重要課題となっていた。
BBVAとの提携により、取引機能と資産保管を完全に分離することで、顧客資産の不正利用リスクを大幅に削減できる。
これは伝統的金融の仕組みを仮想通貨エコシステムに導入する試みといえる。
機関投資家向けサービスを強化
BBVAは2025年3月にスペインの規制当局から仮想通貨サービスの認可を取得し、モバイルアプリを通じてビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の取引を開始。
同行はプライベートバンキング顧客に対し、ポートフォリオの3〜7%を新しい仮想通貨に配分するよう助言している。
欧州連合(EU)の暗号資産市場規制(MiCA)により、取引所とカストディ業務の分離が義務付けられるなど、規制環境が整備されてきた。
これにより伝統的な銀行が仮想通貨プラットフォームと連携しやすい環境が整った。
バイナンスはすでにスイスのシグナムやフローバンクとも提携しているが、BBVAのような世界的に認知された大手銀行との連携は、機関投資家の参入を促進する可能性がある。
今回の提携について、バイナンスとBBVAの双方から正式なコメントは出ていない。
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