資産運用大手ブラックロックは、米国の新法GENIUS法に対応し、ステーブルコイン発行者専用のマネーマーケットファンドを再編した。
資産運用大手のブラックロックは16日、米国の新たな連邦規制下で事業を行うステーブルコイン発行者専用に、マネーマーケットファンドを再編したことを明らかにした。
GENIUS法への準拠とファンドの再編
同社は今回、「ブラックロック・セレクト・トレジャリー・ベースド・リクイディティ・ファンド(BSTBL)を再編した。
このファンドは、総資産の100%を現金、米国財務省短期証券、および米国政府が発行または保証するその他の債券に投資し、他の資産クラスへのエクスポージャーは排除される。
この変更は、ステーブルコイン発行者の準備金管理要件に合わせるためのものだ。東部時間午後5時を取引の最終期限とする新たな運用規則も導入された。
今回の再編は、2025年7月にトランプ大統領が署名し成立したGENIUS法に直接対応するものだ。
同法は、連邦レベルでステーブルコイン発行者の基準を定め、主に米国債や現金からなる質の高い流動性のある準備金の維持を義務付けている。
フィデリティ社の発表によれば、BSTBLはGENIUS法に準拠した形で構成された「’40 Act 2a7 マネーマーケットファンド」として運営されるという。
市場の需要とブラックロックの戦略
この動きの背景には、GENIUS法の厳格な規制要件がある。
連邦政府に認可されたステーブルコイン発行者は、米国債や現金同等物などの質の高い流動資産で準備金を保有し、厳格な資金洗浄対策と報告義務を遵守する必要がある。
業界分析によると、現在の3,000億ドル規模のステーブルコイン市場は、2028年までに2兆ドルに成長すると予測されている。
ブラックロックの今回の動きは、こうした市場の成長と、規制に準拠した現金管理ソリューションに対する機関投資家の需要の高まりに応えるものだ。
同社はすでにビットコイン(BTC)の上場投資信託(ETF)やイーサリアム(ETH)の上場投資商品(ETP)を手掛けており、今回のファンドはデジタル資産戦略の重要な要素となる。
アンカレッジ・デジタル・バンクが発行するGENIUS法準拠のステーブルコインUSDtbのような新たな商品の登場も、準拠した準備金管理ソリューションへの需要を後押ししている。
業界アナリストは「ブロックチェーン上の資本は5年以内に100兆ドルを超える可能性がある」と予測しており、機関投資家向けのインフラ整備の重要性が高まっている。
ブラックロックは、このファンドがトークン化資産経済の基盤インフラとして機能すると位置付けている。
この動きは、米連邦準備制度理事会(FRB)が推進する決済システムの近代化への関心の高まりとも一致する。
今回のファンドは、新しい連邦制度の下で運営されるステーブルコイン発行者のための、規制に準拠した現金管理ソリューションとして設計された。
これは、大手資産運用会社によるGENIUS法への初の本格的な対応となり、他の金融機関のモデルとなる可能性がある。
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