仮想通貨取引所コインベースが、流動性強化のため20億ドル規模の転換社債発行を計画。市場不確実性や財務的圧力に対応する狙いがある。
米ナスダック上場の暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースは5日、総額20億ドルの転換可能シニア債を私募で発行する計画を明らかにした。
この社債は、証券法ルール144Aに基づき、適格機関購入家を対象に発行される。
資金調達の背景と目的
今回の社債発行は、2029年満期と2032年満期の2回に分け、それぞれ10億ドルずつ行われる。引受会社には、各シリーズで追加1億5000万ドル、合計で最大3億ドルを購入するオプションが付与される。
この社債は無担保のシニア債務であり、将来的に現金、コインベースのクラスA普通株式、またはその両方の組み合わせに転換することが可能だ。同社は、厳しい市場環境の中での流動性強化が主な目的であると説明している。
調達した資金は、主に2つの目的に充当される見込みとなる。一つは株式転換が行われた際の希薄化リスクを相殺するためのキャップ付きコール取引の費用であり、もう一つは事業買収や既存債務の返済、運転資金といった一般的な企業活動資金だ。
市場の圧力と今後の戦略
この動きの背景には、コインベースが直面する財務的な圧力がある。同社は2025年第2四半期決算で収益の減少と運営コストの増加を報告し、発表後に株価は15%下落した。このような状況が、戦略的な資金調達の必要性を高めている。
また、米国内における仮想通貨市場への規制の不確実性も要因の一つだ。進化し続ける規制の枠組みに対応し、成長への投資を継続するためには、財務的な柔軟性が不可欠となる。
コインベースは2025年第2四半期時点でビットコイン(BTC)を1万1776枚保有しており、同四半期中に2509BTCを追加取得した。今回の調達資金が、さらなるビットコインの購入に充てられる可能性も指摘されており、機関投資家としての動きが注目される。
ただし、この資金調達にはリスクも伴う。株式への転換が行われた場合の希薄化や、シニア債務としての返済義務が株主にとってのリスクとなる。長期的な価値は、規制の動向や仮想通貨市場の安定性に左右されるだろう。
最近では、ビットコインETFの承認など、市場の成熟を示す動きも見られるため、コインベースの戦略がどのように展開されるか注目される。
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