仮想通貨セキュリティ団体SEALは、メタマスクなど大手ウォレットと提携し、リアルタイムのフィッシング対策ネットワークを開始した。
暗号資産(仮想通貨)のセキュリティに取り組む非営利団体セキュリティ・アライアンス(SEAL)は22日、主要な仮想通貨ウォレット事業者と共同で、世界規模のリアルタイムフィッシング対策ネットワークを立ち上げた。
この取り組みには、メタマスク、ウォレットコネクト、バックパック、ファントムといった業界大手が参加している。
SEALは声明で「世界中の誰もが次の大規模なフィッシング攻撃を防げる、仮想通貨セキュリティのための分散型免疫システムを構築する」と述べ、エコシステム全体の安全性向上を目指す姿勢を示した。
巧妙化する攻撃への対抗策
今回の協力体制は、仮想通貨業界で深刻化するフィッシング詐欺への対応を目的としている。
2025年上半期だけで、フィッシング攻撃による仮想通貨の盗難被害額は4億ドルを超え、同年における最大の盗難原因となった。
攻撃者は手口を巧妙化させており、偽のウェブサイトを頻繁に切り替えたり、海外のサーバーを利用したりするなど、従来のセキュリティ対策を回避する動きが活発化している。
メタマスクのセキュリティ研究者であるオーム・シャー氏は、現状を「絶え間ないいたちごっこ」と表現し、対策が強化されるたびに攻撃者が新たな手法を生み出していると指摘した。
SEALはこれまでも複数のフィッシング攻撃グループの解体に取り組んできたが、急速に進化する脅威に対抗するには、従来の個別的なアプローチでは不十分だと認識していた。
ウォレットコネクトのデレク・レインCTOは、攻撃者が「ブロックされるとすぐにフィッシングサイトを切り替え、インフラを海外に移す」と述べ、より動的で協調的な防衛メカニズムの必要性を強調した。
エコシステム全体で安全性を確保
この新しいネットワークは、SEALが開発した検証可能なフィッシング報告技術を活用する。この技術により、世界中の研究者や利用者が暗号学的な証明を付けてフィッシングサイトを報告できる。
報告された脅威情報は、参加する全てのウォレットに自動で共有され、利用者が悪意のあるサイトにアクセスしようとすると即座に警告が表示される仕組みだ。
この連携は、個別のウォレット保護からエコシステム全体の防衛システムへと移行する、仮想通貨セキュリティの大きな進展を意味する。
SEALは「警告が速ければ速いほど、失われる資金は少なくなる」と述べ、迅速な対応の重要性を訴えた。
各社の代表者もこの協力体制への期待を表明している。
バックパックのアルマーニ・フェランテ氏は、SEALの技術によって「利用者がより安全に、自信を持って仮想通貨の世界を探索できる」と述べた。
また、ファントムのシニアエンジニアであるキム・パーソン氏は、この提携が「ドメインのセキュリティを向上させ、利用者をより良く保護する」と語った。
この取り組みは、Web3セキュリティにおける業界全体の協力体制に向けた重要な一歩となる。
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