欧州中央銀行がデジタルユーロ計画を公表。2029年半を目指し、法整備とインフラ構築を本格化。米決済大手の依存脱却と金融主権の強化が目的。
欧州中央銀行(ECB)は23日、検討を進めてきたデジタルユーロについて、2029年半ばまでの発行を目指す計画を明らかにした。ECBのピエロ・チポローネ専務理事が、金融政策フォーラムで言及したもの。
この発表は、欧州連合(EU)の財務相らがデジタルユーロ導入に向けた行程表で合意したことを受けたもので、ECBはデジタルユーロを「中央銀行が裏付けるオンライン決済ウォレット」として位置付けている。
デジタルユーロ導入に向けた法整備とタイムライン
ECBはデジタルユーロを「中央銀行が発行し、ユーロ圏の誰もが利用できるデジタル版の現金」と定義している。2023年11月に始まった準備段階では、発行に向けたブロックチェーン技術的基盤の構築に焦点が当てられてきた。
導入にはまず法整備の完了が必要とされており、欧州議会、欧州理事会、欧州委員会が2026年5月までにそれぞれの立場を固め、法制作業に着手する見通しだ。
ECBは、法案の承認後、デジタルインフラの導入にさらに2年半から3年を要すると見積もっており、これにより2029年半ばの発行が現実的な目標となる。
金融主権強化と、脱米インフラ依存への戦略
デジタルユーロ推進の背景には、金融、エネルギー、防衛といった重要分野における他国への依存度を低減させたいという欧州の戦略的な思惑がある。
欧州の規制当局は、このデジタル通貨を「欧州通貨システムの戦略的自律性と、非欧州のWeb3決済事業者に対する強靭性」を高めるための手段と見なしている。
特に、ドナルド・トランプ前米国大統領が推進したドル連動型ステーブルコインの世界的な広がりは、この動きを後押しした。欧州当局は、これを金融主権に対する潜在的な脅威と捉えていた。
現在の決済市場は米国のVisaやマスターカードに支配されており、デジタルユーロはこれに代わる代替案を提供することを狙っている。
また、プライバシー侵害や、民間ステーブルコインによる銀行預金流出の懸念も、中央銀行が主導するデジタル通貨開発を加速させる要因となった。
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