ケニア議会は、仮想通貨サービスプロバイダー(VASP)への規制を強化する法案を支持。複数の政府機関による共同監督チームを設立し、金融システムの安定を目指す。
ケニア議会の財務・国家計画委員会は26日、暗号資産(仮想通貨)に対する規制を強化する法案を支持する報告書を提出した。
この動きは、国内の仮想通貨市場における監督体制を整備し、国際的な金融基準に準拠することで、消費者保護と金融システムの安定を図ることを目的としている。
ケニア、仮想通貨規制強化へ
提出された2024年資本市場(改正)法案は、ケニア国内で活動する仮想資産サービスプロバイダー(VASP)に対する包括的な規制の枠組みを導入するものだ。
法案の核心には、複数の政府機関で構成される共同監督チームの設立が据えられている。このチームは、仮想通貨に関連する金融リスクや技術的課題を多角的に監視し、迅速に対処する権限を持つことになる。
具体的には、VASPに対して資本市場庁(CMA)への登録とライセンス取得を義務付ける。これにより、事業者の財務健全性や運営体制の適格性が厳しく審査される。また、マネーロンダリングやテロ資金供与の防止(AML/CFT)に関する国際基準に沿った厳格なコンプライアンスが求められ、金融システムの健全性維持が図られる。
この規制強化の背景には、金融活動作業部会(FATF)からの強い要請がある。
FATFは各国に対し、仮想通貨がもたらす匿名性を悪用した金融犯罪のリスクを軽減するため、実効性のある規制導入を勧告している。ケニア政府もこの国際的な流れに沿い、法整備を急いでいる形だ。
省庁横断チームによる監督と今後の展望
共同監督チームの構成は、ケニア政府の本気度を物語っている。
財務・国家計画省の主導のもと、金融政策を司るケニア中央銀行(CBK)、証券市場を監督する資本市場庁(CMA)、金融犯罪を監視する金融報告センター(FRC)といった主要な金融当局が参加する。
さらに、通信インフラを管轄する通信庁(CA)、安全保障を担う国家情報局(NIS)、法執行機関である国家警察庁(NPS)も加わる。
このような省庁横断的なアプローチは、仮想通貨が金融の枠を超え、テクノロジー、サイバーセキュリティ、国家安全保障にも深く関わる複雑な分野であることを明確に示している。その基盤技術であるブロックチェーンとは、取引の透明性と改ざん耐性を保証する上で中心的な役割を担う。
過去には、虹彩スキャンによって仮想通貨を配布するWorldcoinプロジェクトが、個人情報保護の観点から国内で大きな議論を呼び、活動停止に至った。この一件は、明確な規制がないことのリスクを浮き彫りにし、包括的な法整備の必要性を改めて認識させるきっかけとなった。
議会委員会は報告書の中で、規制の不在が消費者保護の欠如を招き、違法な資金洗浄の温床となる危険性を強く指摘した。特に、世界で最も有名なビットコインとは何かという基本的な知識が一般に不足していることも、投資家保護の観点から課題とされている。
法案の成立が、ケニアの金融システムの安定性と国際的な信頼性を高める上で不可欠であると結論付けている。法案が可決されれば、ケニアの仮想通貨市場は大きな転換点を迎えるだろう。
事業者には新たなコンプライアンスコストという課題が生じるが、利用者にとってはより安全で透明性の高い取引環境が提供される潜在的価値がある。このケニアの先進的な取り組みは、アフリカ大陸における仮想通貨規制のモデルケースとなる可能性を秘めている。
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