米テック界の著名投資家らが、仮想通貨企業向けの新銀行「Erebor」を設立する計画。SVB崩壊後の金融インフラの空白を埋めることを目指す。
米国の著名なテック投資家であるピーター・ティール氏らは1日、新銀行Ereborを設立する計画を明らかにした。
この計画には、ティール氏のほか、VR企業Oculusの創業者パーマー・ラッキー氏、ベンチャーキャピタル投資家のジョー・ロンズデール氏が参加している。
同銀行は、暗号資産(仮想通貨)企業や、従来の金融機関からサービスを受けにくい新興企業を主な顧客と想定している。
2023年に破綻したシリコンバレー銀行は、多くのスタートアップ企業にとって重要な金融機関であった。Ereborは、SVBの破綻によって生じた金融サービスの空白を埋めることを目指している。
全米銀行としてのライセンス申請とサービス内容
Ereborは、米通貨監督庁(OCC)に対し、全米銀行としての運営許可を申請した。これにより、預金や融資といった伝統的な銀行業務に加え、デジタル資産関連のサービスも提供可能となる。こうしたデジタル金融サービスの拡大は、Web3などの次世代インターネットの潮流とも関連している。
特に、ステーブルコインの取引を事業の柱の一つに据える計画だ。同行は、バランスシート上でステーブルコインを保有し、法定通貨と仮想通貨の円滑な交換を促進することを目指している。
また、Ereborはデジタルファーストのアプローチを採用し、主要な拠点はニューヨークに置く予定である。AIや防衛、製造分野のスタートアップも支援対象に含まれる。
規制遵守と市場機会
創設者らは、Ereborを「ステーブルコイン取引において最も規制された事業体」と位置づけることで、コンプライアンスを重視する姿勢を強調している。近年の米国のステーブルコインに関する規制整備が、この動きを後押しした。
従来の銀行は、規制上のリスクから仮想通貨関連企業との取引に消極的な場合が多い。このため、専門的な金融インフラに対する需要が高まっており、Ereborにとって大きな事業機会となっている。
ティール氏が共同設立したFounders Fundや、ロンズデール氏が率いる8VCなどが初期の資金提供者に名を連ねている。ティール氏は以前からビットコイン(BTC)の支持者として知られており、その思想が新銀行の戦略にも反映されているとみられる。
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