テザーはウルグアイのビットコインマイニング事業を停止。国営電力会社との料金交渉が決裂し、採算が合わなくなったためだ。
ステーブルコイン発行大手テザー社は11月28日、ウルグアイでのビットコインマイニング事業を正式に停止した。
同社は国営電力会社UTEとの電力料金交渉が決裂したことを受け、38名の従業員のうち30名を解雇し、すべての施設を閉鎖する。
2023年5月に約5億ドル規模の投資計画として始動したプロジェクトは、すでに1億ドル以上を投じたにもかかわらず、わずか2年余りで幕を閉じることになった。
電力料金の対立が決定打に
テザーは2023年5月、子会社マイクロフィンを通じてウルグアイでの持続可能なビットコインマイニング事業を開始。
3つのデータセンターと300メガワット規模の再生可能エネルギーパークの建設を計画していた。
同社のパオロ・アルドイーノCEOは当初、ウルグアイの再生可能エネルギー率94%という環境を高く評価し、「環境負荷を最小限に抑えた持続可能なマイニングのモデルケース」と位置づけていた。
しかし、2025年に入り状況は急変。
UTEへの電力料金未払いが480万ドルに達し、7月25日には2施設への電力供給が停止された。
テザー側は31.5kVから150kVへの送電料金体系の変更を求め、コスト削減とインフラ重複の回避を提案したが、交渉は最終的に決裂。
ローカルメディアの報道によると、ウルグアイの電力料金はメガワット時あたり60〜180ドルと、競合地域と比較して割高だった。
1億5000万ドル投資も事業継続断念
計画された5億ドルの投資のうち、テザーはマイニング機器に1億ドル以上、UTEが管理するインフラ整備に5000万ドルを費やしていた。
しかし、競争力のある長期電力契約を確保できなかったことで、事業継続は経済的に不可能と判断された。
テザーはウルグアイ労働社会保障省に対し、事業停止と従業員解雇を正式に通知。
残された8名のスタッフが年末までに機器の撤去と施設閉鎖を担当する。
テザーの広報担当者は「ラテンアメリカでの長期的な取り組み、特に再生可能エネルギーを活用したプロジェクトへのコミットメントは継続する」と述べている。
同社は今年、本社をエルサルバドルに移転しており、パラグアイやブラジルでのマイニング事業も検討しているとされる。
テザー社は今回の撤退にかかわらず、主力のステーブルコイン事業では依然として圧倒的なシェアを誇る。
今後はエネルギー効率などの課題をクリアしながら、より慎重な暗号資産(仮想通貨)投資戦略を進めていくと予想される。
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