MiCA規制施行から1年、ユーロ建てステーブルコインの時価総額が倍増し取引量も急増。規制による信頼性向上が市場回復を牽引。
ロンドンの決済企業デクタは1日、ユーロ建てステーブルコインの市場動向を分析した「ユーロ・ステーブルコイン・トレンドレポート2025」を公開した。
欧州連合(EU)の暗号資産(仮想通貨)規制MiCAが2024年6月末に施行されて以降、ユーロ建てステーブルコインの市場環境は劇的に変化している。
施行前の12カ月間で時価総額が48%縮小していたのに対し、施行後の12カ月間では102%増加と完全に反転。
月間取引額も3億8300万ドルから38億3200万ドルへと約9倍に急増した。
MiCA施行で市場が急回復
デクタのレポートは、規制の明確化が投資家の信頼回復につながったと分析している。
MiCAは発行者に対し、準備金の完全担保、透明性の確保、償還権の保証などを義務付けている。
機関投資家や規制を重視するユーザーが、明確な準備金報告とライセンスに裏付けられたステーブルコインを選好する傾向が強まった。
成長を牽引したのは、EURS、EURC、EURCVの3銘柄だ。
マルタ拠点のスタシスが発行するEURSは643.86%増と最も顕著な伸びを見せ、時価総額2億8390万ドルに到達。
サークルのEURCとソシエテ・ジェネラルのSGフォージが発行するEURCVも、取引量がそれぞれ1139%増、343%増と大幅に拡大している。
消費者の関心も急上昇
市場の成長に伴い、消費者の関心も高まっている。
デクタの調査によると、ステーブルコインの購入方法に関する検索数はフィンランドで400%増、イタリアで313%増、ルーマニアで300%増と急上昇。
ドイツ、オランダ、スウェーデンでも280%以上の伸びを記録した。EU全体の平均増加率は198.3%となっている。
一方、マルタでは50%減少するなど、加盟国によって温度差も見られる。
ラトビアも33.3%減と、関心が低下した数少ない国の一つとなった。
市場の回復は顕著だが、ユーロ建てステーブルコインの規模は依然として限定的だ。
現在の時価総額は約6億8000万ドルで、テザー(USDT)やUSDCが支配する米ドル建て市場の約3000億ドルとは大きな開きがある。
MiCAによる厳格な監督体制は、長期ユーザーにとって魅力的な要素となり、海外の仮想通貨取引所での採用拡大にも寄与する。
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